事 案 |
国境を越えた子の連れ去り防止を定めた「ハーグ条約」に基づく裁判所の返還命令に従わないのは違法として、米国在住の父親が息子(13)を連れて帰国した母親に息子の引き渡しを求めた人身保護請求の差し戻し審。 争っているのは米国で暮らしていた日本人夫婦。母親が2016年に息子を連れて帰国し、父親がハーグ条約の国内実施法に基づいて東京家裁に息子の返還を申し立てた。家裁は返還を命じたが母親は応じず、父親は息子の引き渡しを求め人身保護請求の裁判(2審制)を起こした。 1審の名古屋高裁金沢支部は昨年11月、「息子は自らの意思で日本に残ることを選んだ」と請求を退けたが、最高裁は今年3月、母親の不当な心理的影響を受けていると言わざるを得ないとして破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻した。 |
結 果(名古屋高裁平成30年7月17日) |
息子が「米国での生活に不安があり、日本に残りたい」と話しているとしつつも「来日以来、母親に大きく依存して生活せざるを得ない状況にあり、母親のもとにとどまるかどうか決めるための多面的な情報を十分に得るのは困難だった」と判断し、母親の不当な心理的影響も指摘した。 その上で、母親が返還命令に従わず、息子を父親に引き渡さないのは明らかに違法と結論づけた。 |
出典 |
毎日新聞2018年7月17日 21時23分(最終更新 7月17日 23時44分) |
参 考 |
ハーグ条約により子の引渡しの強制執行をするには、まず間接強制(裁判所が債務者、本件では母に対し、金銭の支払を命じる等により心理的に圧迫し義務の履行を強制する方法)が前置しなければなりません。 間接強制の決定が出てもなお子どもを返還せず、2週間が経過したときには、家庭裁判所に子の返還の代替執行(裁判所の執行官が子どもの生活している居所などに赴き、債務者を説得するなどして返還実施者が子を常居所国に連れ帰るという執行方法)を申立てることができます。ただそれでも債務者が引渡しを拒んだ場合には、債務者を拘束者として人身保護請求を訴えるという方法が考えられます。 |