建築瑕疵の判断基準
建物に欠陥があるとき、それが法的に見て「瑕疵」と言えるかどうかの判断は簡単ではありません。一生に一度の大きな買い物をした方によってみれば、完璧なものを求める気持ちは十分理解できます。他方で、建物を造るほうにしてみれば、人間が造る以上、完璧なものはありえません。
では、瑕疵といえるかどうかはどう判断するのでしょうか。「瑕疵」の判断基準は,一般に①通常有すべき品質・性能を欠いていること(客観的瑕疵),もしくは②当事者が契約で定めた内容に適合していないこと(主観的瑕疵),とされております。
客観的瑕疵とは,建築基準法等の法令による要求を満たしているかどうかや,標準的な技術水準に合致しているかどうかを基準に判断します。他方,主観的瑕疵は,当事者が契約で定めた内容の適合性が問題となりますので,設計図書,契約図書等のとおりの建築物となっているかどうかにより判断します。
建築紛争においては、しばしば「実際の強度に問題はない。」という反論がなされますが、こういった主張は妥当なのでしょうか。札幌地裁平成17年10月28日判決はこういった考えを否定しています。
1 争点(1)(本件建物の瑕疵の存否)について (1)瑕疵の判断基準 建物について瑕疵があるか否かを判断するに当たっては,まず,当該建物の設計図書,契約図書及び確認図書(以下「設計図書等」という。)が当事者間の契約内容を画するものであることに加え,それらが行政の行う建築確認や許可等の判断資料となることからすると,特段の事情のない限り,当該建物が設計図書等のとおりに建築されている場合には瑕疵がないとし,そのとおりに建築されていない場合には瑕疵があるものと判断すべきである。 また,法及び施行令,建設省(国土交通省)告示,JASS5(鉄筋コンクリート造建物の場合)等(以下これらを併せて「法令等」という。)は,建築上の最低基準を定め(法1条),それを具体化し,あるいは我が国の建築界の通説的基準を示すものである(JASS5も,時代とともに改正が重ねられてきた建築業界での通説的基準であると認められる(甲40)。)から,法令等の定めを満たしている場合には瑕疵がなく,これを満たさない場合には瑕疵があると判断すべきである。 これに対し,法令等が安全な建物が建築されることを目的として定められていることなどを根拠として,当該建物が事実上安全であれば瑕疵はないとすべきであるとして,事実上の安全性を瑕疵の判断基準とする考え方もある。しかし,建物の事実上の耐力を数値化することはできず,それを前提として将来当該建物に襲来する荷重を予測することもできないのであって,事実上の安全性の有無を的確かつ客観的に判定することは不可能である。したがって,事実上の安全性といった概念は,瑕疵の判断基準として合理的なものとはいえず,上記のような考え方を採用することはできない。 以上のことから,建物の瑕疵の存否は,上記のように,それが設計図書等に従っているか否か,また,法令等の定めを満たしているか否かによって判断するのが相当であり,以下においては,このような観点に基づいて,本件建物について瑕疵があるか否かを検討することとする。 |
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