かつて、最高裁は「企業者が雇傭の自由を有し、思想、信条を理由として雇入れを拒んでもこれを目して違法とすることができない以上、企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない。」と述べ、法的には、思想・信条を調査すること、質問することは可能となっています(三菱樹脂事件、最判昭和48年12月12日)。しかし、これ最高裁判決以降、我が国における人権意識も高まってきており、厚生労働省も、明確に採用選考時において就職差別につながる事項に配慮するよう求めています。
次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
a.本人に責任のない事項の把握 |
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します) ・家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します) ・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など) ・生活環境・家庭環境などに関すること |
b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握 |
・宗教に関すること ・支持政党に関すること ・人生観、生活信条に関すること ・尊敬する人物に関すること ・思想に関すること ・労働組合・学生運動など社会運動に関すること ・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること |
c.採用選考の方法 |
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります) ・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施 |
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