事 案 |
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被告が財団法人A(以下「A」という。)に対して平成22年9月30日付けでB病院職員宿舎(鉄筋コンクリート造・一部鉄骨造,地上8階建の共同住宅,保育所。以下「本件係争建物」という。)の増築についてした建築基準法6条の2第1項に基づく確認処分(確認番号第×××××××××××号)につき,原告らが,被告に対し,本件処分が同法6条1項にいう建築基準関係規定に違反する違法なものである旨主張して,本件処分の取消しを求める事案 |
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争 点 |
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本件処分の適法性の有無-本件処分が県条例9条の定める接道義務の要件を満たすかに関し,本件係争建物が,「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物」(令1条1号)と認められるか。 |
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規 範 |
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一建築物一敷地の原則が,本件で問題となっている敷地の接道義務(法43条1項)のほか,容積率及び建ぺい率の制限(同52条,53条),隣地斜線制限及び北側斜線制限(同56条),日影制限(同56条の2)等の建築規制を実効あらしめるものであることからすると,「一の建築物」に当たるか否かを判断するに当たっては,このような法令の趣旨及び目的に鑑み,社会通念に照らし,構造上,外観上及び機能上の一体性の各面から総合的に判断するのが相当である。 |
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結 論 |
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本件係争建物について,その外観上,構造上及び機能上の各面を総合すれば,「一の建築物」に当たると認めるのが相当である |
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具体的事案検討 |
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外観上・構造上の一体性 |
本件係争建物の外観上及び構造上の一体性についてみると,本件係争建物は南棟と北棟とが長さ35.2m,幅約1.75mの概ね直線状の本件渡り廊下で接続されており,本件渡り廊下は屋根や外壁によって覆われ,屋外に開放されていない上,各棟とは外形上共通の外壁で連続する形で施工されることからすれば,本件係争建物には外観上及び構造上の一体性が一定程度認められる。 |
機能上の一体性 |
本件係争建物は病院の職員宿舎であり,本件南棟には職員の居宅用の居室及び共用施設として保育所や職員会議室が設置される予定であるところ,本件南棟における水道水及び電気の供給は本件北棟内の既存の設備を介して行われる上,本件南棟への出入りや郵便物の受取も本件北棟を通じて行われることになるのであって,このような設備の利用には,費用,資源等の経済面や防災,防犯等のセキュリティ面からみて合理性が認められる。そうすると,本件南棟の主要な用途に即した機能は,本件北棟に存する設備の利用と一体となって実現されるものということができるから,本件北棟と本件南棟の間には機能上の一体性があり,その程度は相当強度のものと認められる。 |
備 考 |
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この裁判例においては、「本件係争建物のように,外観から一見して「一の建築物」としての要件を充足するか明確に判断し難い建築物については,建築確認申請を受けた建築主事又は指定確認検査機関において,「建築物の一体性」について,機能上の一体性を含めた総合的な判断を的確に行うことが求められる一方,建築主の側において,上記判断に必要かつ適切な資料を提出するとともに,建築確認申請から建築工事の完了に至る過程で,周辺住民に対する説明等の面で相応の配慮をすることが望まれるところである。」とも判示されている。 |