事案の概要 |
それぞれ被告株式会社A1から土地を購入するとともに,同土地上に建物を建築することを被告A1に請け負わせるなどした原告らが,同土地に産業廃棄物が埋設されていることが契約締結後に判明したとして,①被告A1に対しては,主位的には土地の売買契約及び建物の建築請負契約等の錯誤無効,瑕疵担保責任若しくは説明義務違反に基づく契約解除又は詐欺取消しを主張して被告A1に支払った売買代金及び請負代金等の返還を求め,予備的には瑕疵担保責任,説明義務違反又は民法709条(詐欺)に基づく損害賠償として上記代金相当額の金員及び慰謝料の支払を求め,②被告A1の代表者である被告A2に対しては,詐欺を理由に民法709条又は商法266条の3(平成17年法律第87号による削除前のもの。)に基づき損害賠償として上記と同額の金員の支払を求める事案 |
争 点 |
1 瑕疵担保責任に基づく解除の主張について |
2 原告らが被った損害の額 |
判 旨 |
原告らは居住目的で本件各契約を締結したものであるところ,本件各土地に埋設されている廃棄物が原告らの健康に被害を与えたり本件各建物の安全性に影響を与えたりするものではなく,したがって,本件各土地及び本件各建物において日常生活を送る上で格別の支障があるとは認められないが,前記のような大量の廃棄物が広範囲にわたって埋設されているという嫌悪すべき事情があり,これに加えて,将来増改築する場合,本件各建物の建築の際のように,地盤改良工事あるいは廃棄物の撤去のために費用を要することも予想されることからすると,本件各土地は,通常有すべき性質を欠いているというべきであり,この意味において瑕疵があるということができる。 |
本件各土地の地中に産業廃棄物が埋設されているからといって,原告らが本件各土地及び本件各建物において日常生活を送ること自体に支障はなく,このことは心理的な嫌悪感にとどまるものであるし,将来の増改築の際にも地盤改良工事ないし廃棄物の撤去に費用を要することが予想されるという程度のものであることからすると,本件各土地に上記の瑕疵があるからといって,これにより本件各契約の目的を達することができないと認めることはできず,原告らは,民法570条,566条1項前段により本件各契約を解除することはできないというべきである。 |
本件各建物には瑕疵はなく,本件各土地についても,客観的な取引価値が零であると認めることはできない。そして,J作成の不動産鑑定評価書(乙18)は,廃棄物が埋設されていることによって,本件各土地につきいずれも26%減額して評価されるというものであるが,不動産業者である被告A1の代表者である被告A2は本件各土地に廃棄物が埋設されていると知っていたら本件各土地を購入することはない旨本人尋問において供述していること,同評価書は減価要因として廃棄物が埋設されているという心理的嫌悪感を挙げているところ,前記のとおり,将来増改築される際には,地盤改良工事や廃棄物の撤去に費用を要することが予想され,このことも減価要因と認められること,前記1(11)の事実などを勘案すると,本件各土地の価額は,上記の瑕疵の存在により,当該瑕疵がない場合と比較して50%減価するものと認めるのが相当である。 |