事 案 |
原告が被告らに対し、被告B、被告C及び被告Dが原告の営業資料に含まれる営業秘密を不正に持ち出し、被告会社が右営業秘密を使用した行為が、不正競争行為、債務不履行及び不法行為に該当すると主張して、被告らに対し、損害賠償の支払を請求した事案 |
争 点 |
本件営業資料が「有用な情報」を含んでいるといえるか |
結 論 |
本件営業資料は、いずれも、有用な情報を含んでいるということができ、特に「暫定顧客名簿(電話帳抜粋)」、「お客様情報」及び「来山者名簿」は、墓石販売業者の営業活動にとって活用価値の高い情報を含んでいるということができる。 |
理 由 |
「暫定顧客名簿(電話帳抜粋)」及び「お客様情報」には、同一顧客への再三にわたる電話での勧誘や事情調査を経て得られた顧客情報が記載され、前者には、①全く無反応の者、②何らかの反応があり、中、長期間にわたり勧誘すれば、成約に至る可能性のある者(中期客、長期客)、③好反応があり、短期間のうちに成約に至る可能性がある者(短期客)かどうかの情報が、後者には、成約見込み客に定期的に電話して得られた購入計画状況等に関する情報が含まれている。ところで、原告において、無差別に行った電話帳による顧客勧誘の成約率は、約〇・〇一五パーセントと極めて低い。したがって、右各資料に含まれる成約可能性に関する顧客情報は、効率的な営業活動をするに当たって、有用な情報であるといえる。「来山者名簿」及び「(予約)聖地使用契約書」には、顧客の住所、氏名、電話番号等の情報が記載され、前者には、原告の折り込み広告を見て、墓に関心を持って寺院を来訪した顧客に関する情報が、後者には、最終的に契約を断念した顧客に関する情報が記載されている。このような顧客は、墓に高い関心を持った顧客であり、成約に至る可能性が高いグループということができる。したがって、右資料に含まれる情報は、効率的な営業活動に当たり有用な情報ということができる。「加工図・パース」及び「墓石原価表」は、それぞれ、墓石の外観と単価等が記載され、前四者とは、有用性の範囲・程度は異なるが、一応、有益な情報といって差し支えない。 |
備 考 |
営業秘密を保護する施策として、保有・保管する営業秘密の客観的な価値を明らかにしておくことが重要となる。本件では、「無差別に行った電話帳による顧客勧誘の成約率は、約〇・〇一五パーセントと極めて低い」ことから、その営業秘密の有用性が認められている。 |