事 案 |
原告らが,本件マンションの注文者である被告A及び本件マンションの建設工事を担当した被告Bに対し,本件マンションによる圧迫感,プライバシー侵害,日照侵害を受けているとして,不法行為に基づき,金員の支払請求等を求める事案 |
争 点 |
本件マンションが原告らの日照を侵害しているとして不法行為が成立するか |
結 論 |
原告C及び原告Dの日照が受忍限度を超えて侵害されたとはいえない。 |
認定事実 |
・冬至における午前8時から午後4時までの日影の状況(建築基準法別表第四に基づき,平均地盤面からの高さを4mとして算定。)は,本件マンション建築により,原告C宅では,午後2時ころから日影となり,原告D宅では,午後1時35分ころから日影となる。 ・一方,原告C宅で一番日影となる時間が長い地点である1階茶の間前の廊下における冬至の日の午前8時から午後4時までの日影時間(原告C宅地盤面からの高さを50㎝として算定。)は7時間28分に及び,原告D宅で一番日影となる時間が長い地点である居間兼食堂における冬至の日の午前8時から午後4時までの日影時間(原告D宅地盤面から高さを50㎝として算定。)は7時間50分に及ぶ。 ・もっとも,原告C宅の1階茶の間前の廊下における冬至の日の午前8時から午後4時までの自己建物による日影時間(原告C宅地盤面からの高さを50㎝として算定。)は5時間15分に及び,原告D宅の居間兼食堂における冬至の日の午前8時から午後4時までの日影時間(原告D宅地盤面からの高さを50㎝として算定。)は5時間15分に及んでいるため,本件マンションを建設したことによる日影時間は,原告C宅で2時間13分,原告D宅で2時間35分となる。 ・また,原告C宅で一番日影となる時間が短い地点である応接間の冬至の日の午前8時から午後4時までの日影時間(原告C宅地盤面からの高さを50㎝として算定。)は,自己建物の影響によっては全くなく,本件マンションを建設したことにより1時間20分となり,原告D宅で一番日影となる時間が短い地点である応接室の冬至の日の午前8時から午後4時までの日影時間(原告D宅地盤面からの高さを50㎝として算定。)は,自己建物の影響によっては全くなく,本件マンションを建設したことにより25分となる。 |
評 価 |
確かに,本件マンションが建設されたことにより,原告C宅及び原告D宅の一番日影となる地点では,一日中日影といってよいほど日影となる時間が長い。 しかし,当該地点においては,本件マンション建設前から日影時間がかなり長く,本件マンションが建築されたことによる日影時間の増加に伴い,一日中日影となる状況に至ったものということができる。そして,本件マンションによる日影時間は,前記のとおり,建築基準法56条の2の基準内である4時間以内の日影であり,それより低い地点を基準にして日影を算定しても,日影時間は長くても3時間程度であることから,本件マンション建設による日影の時間は比較的少ないといえる。また,原告C宅及び原告D宅のいずれにおいても,本件マンションが建設されたことによってもあまり日影とならない地点も存在する。 そして,被告Aが,本件マンションの高さ,容積率を低くするよう計画を変更したことなども考慮すると,原告C及び原告Dの日照が受忍限度を超えて侵害されたとはいえない。 |