1 増える職場のいじめ問題とその背景
近時,雇用態様が多様化し,さらに長引く経済不況を背景に,労働相談自体が増加しています。その中でも,職場のいじめに関する相談は非常に増えています。
その原因は様々ですが、一つには、働き方が変化して職場の人間関係が希薄化してきたことが挙げられます。その背景には、作業のIT化,成果主義によって労働者同士の競争が激しくなってきたこと,様々な雇用形態・労働条件の労働者が一緒に仕事をするようになってきたことなどがあります。
また,職場のいじめやセクハラ等についての法整備がなされ,労働者の人格権が裁判上も確立してきたといことも背景にあると思われます。
2 企業が受ける影響
(1)職場のモラル低下・生産性低下
いじめが発生すると,従業員の士気がさがり,全体のモラルが低下し,ひいては,生産性の低下を招きます。
(2)人材の損失
いじめが原因で従業員が退職するなど,企業にとって重要な人材が失われます。
(3)損害賠償責任
いじめ・パワハラ行為を行った従業員の使用者として,民事上,損害賠償責任を負います。
(4)社会的信用の喪失
近時,インターネットの普及も相まって,企業の不祥事に関する情報の伝播は非常に速くなっています。企業が長年にわたって築いた信用も一瞬にして失いかねません。
3 職場のいじめに対する企業側の取るべき対策
(1)職場におけるいじめの類型
裁判上問題となった職場のいじめを大きく分類すると①使用者の意思による「退職強要型」のいじめ、②上司・同僚とのトラブルによる「人間関係型」のいじめの2つの類型に分けられます。
退職強要型 |
人間関係型 |
・退職届の提出を強要する ・仕事を取り上げる ・過大なノルマを課す ・遠隔地への配置転換 |
・人格を否定する発言、叱責 ・からかい ・無視、無交渉 |
(2)企業自らが加害者にならないように
職場のいじめの態様として多いのが,「退職強要」や「不当な業務命令・業務指導」です。
暴力や労働者の人格を否定するような行動が伴うなど,退職勧奨の手段・方法が社会通念上の相当性を欠く場合には,違法な退職強要となり,退職勧奨をしたこと自体が不法行為となり損害賠償請求の対象となります。
業務命令や指導についても,業務の必要性の有無,その目的,労働者に与える不利益の程度によっては,違法な業務命令・指導として損害賠償請求の対象となります。
(3)職場のいじめ防止対策を講じる
まず,職場内のいじめについての現状を把握し,具体的な方針を決定し,社員に周知します。
4 実際に職場でいじめ・パワハラが起きた場合の対策
(1)事実確認
職場等において,いじめ・パワハラ等が発生した場合,被害拡大を防止し,被害回復を図るため,使用者には迅速かつ的確な事実調査が要請されます。個人の問題として捉えるのではなく,職場環境全体の問題として取り組むことが重要です。
事情を聴取・把握する際には,関係者のプライバシーに十分配慮することも必要です。そのうえで,当事者の心情にも配慮しながら,経過報告をしましょう。
(2)当事者のあっせん・カウンセリング
調査で把握した事実につき,違法性があるのかないのかを法的に判断します。
その上で,両当事者間のあっせん・カウンセリング・処分等の具体的な処置を講じます。
(3)現状分析・再発防止策
そして,社内アンケート等を通じ,いじめ・パワハラ行為が行われた原因を分析し,基本方針や再発防止策を講じた上で,それを従業員に周知・教育します。
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