労働者の状況
厳しい経済情勢や職場環境の変化を背景に,精神障害等による労災請求件数は,平成17年度656件から平成21年度1,136件へと確実に増えています。この傾向は,うつ病等の精神疾患に対する国民の理解が高まるにつれ,今後も増えていくと考えられます。
過重労働による健康障害
時間外・休日労働時間が月45時間を超えると次第に健康障害のリスクが高まり、月100時間を超えたり、2~6カ月平均で月80時間を超えると、健康障害のリスクは非常に高まるとされています。
問われる企業側の責任と企業の負うリスク
従業員がメンタルヘルス不調に陥ると,労働生産性が落ちることはもちろん,従業員が健康を害したことに対する法的責任を追及されるリスクもあります。事実,職場における心理的負荷が原因でメンタルヘルス不調に至り自殺したとして,企業に高額な賠償を命じた裁判例も出てきています。また,企業の責任に合わせて,取締役などの役員の責任を認める裁判例も出てきています。労働者が自殺した場合に企業が負う賠償は,賠償責任保険の対象とはなっていなため,企業が負う経済的負担は図り知れません。
労働基準監督署も,こうした状況を踏まえ,メンタルヘルス対策・過労死防止対策について事業場に対する指導を強化し,その数は,平成21年度上半期で4,485事業場にも及んでいます。
社員が精神疾患にかかったら
社員が精神疾患にかかった場合、その原因が過重労働にあるのか、個人的事情にあるのかが重要なポイントになります。これは、業務上災害と私傷病の場合とでは対応が異なるからです。精神疾患の原因は多岐にわたるので、原因がはっきりしない場合も多いかと思いますが、過重な業務によるものと疑われる場合には注意が必要です・
業務災害にあたるかどうかの判断は、発症前6カ月間の長時間労働や業務による強いストレスの有無がポイントになります。
労働者の復職可否の判断
独立行政法人N事件(東京地裁平成16年3月26日)は,労働者の復職可否の判断について以下のように述べています。
私傷病休職からの復職が認められるためには、休職の原因となった私傷病の治癒が必要であり、治癒とは、原則として従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したことを要するが、当該職員の従事する職種に限定がなく、他の軽易な職種であれば従事することができ、軽易な職務に配置換えすることが可能であるとか、当初は軽易な職務に就かせ、程なく従前の職務を通常行うことができると予測できる場合には、復職を認めることが相当である。 |
従って,不可を軽減した業務ならできる程度まで回復しているかの確認が必要になります。その判断は,主治医の診断に大きく左右されますが,主治医の診断書は労働者の希望を反映したものであることが多いことに注意が必要です。主治医の診断書を鵜呑みにすることなく,実際に主治医に面談すること,できれば産業医の意見を聴取する,または会社の指定する医師の診断を求めることが望まれます。
メンタルヘルス対策の必要性
現在,精神疾患に罹患した従業員の処遇を適切に処理するための休職制度の確立だけでなく,早期発見に向けた相談窓口の体制確立等,将来の訴訟リスクを回避する措置を講じておく必要性が高まっています。
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