~事案~
土地の売買において買主の仮登記が付されたが、売買から20年以上経過した後に、売主が買主の仮登記を抹消した上で第三者に売却したため、買主が売主に対し債務不履行による損害賠償を求め、売主が消滅時効を主張し争った事案
~争点~
契約に基づく債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効の起算点
~判旨~
損害賠償請求権の消滅時効は、所有権移転許可申請義務の履行を請求し得る時、すなわち、本件契約締結時からその進行を開始する
~判決~最高裁平成10年4月24日~
契約に基づく債務について不履行があったことによる損害賠償請求権は、本来の 履行請求権の拡張ないし内容の変更であって、本来の履行請求権と法的に同一性を有すると見ることができるから、債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって 生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始するものと解するのが相当である(大審院大正八年(オ)第五八五号同年 一〇月二九日判決・民録二五輯一八五四頁、最高裁昭和三三年(オ)第五九九号同 三五年一一月一日第三小法廷判決・民集一四巻一三号二七八一頁参照)。
これを本件についてみるのに、前記事実関係の下においては、上告人が本件土地 をEに売却してその旨の所有権移転登記を経由したことにより、本件契約に基づく 上告人の売主としての義務は、上告人の責めに帰すべき事由に基づき履行不能となったのであるが、これによって生じた損害賠償請求権の消滅時効は、所有権移転許可申請義務の履行を請求し得る時、すなわち、本件契約締結時からその進行を開始するのであり、また、上告人が平成五年一月二五日ころにした消滅時効の援用は、本来の履行請求権とこれに代わる損害賠償請求権との法的同一性にかんがみれば、 右損害賠償請求権についての消滅時効を援用する趣旨のものと解し得るものである。 そうすると、右損害賠償請求権は、格別の事情がなければ、上告人の右時効の援用 によって消滅することとなるはずのものである。
2017年
10月
05日
木
C氏の娘に一部執行猶予 覚醒剤使用、東京地裁 作家Cさんの娘で、覚せい剤取締法違反(使用)罪に問われた無職のN・A被告(32)に東京地裁は12日、刑の一部執行猶予制度を適用し、懲役2年2月、うち懲役4月を保護観察付き執行猶予2年(求刑懲役3年)とする判決を言い渡した。 林直弘裁判官は「覚醒剤使用の前科があり、薬物への強い依存性がある。規範意識が鈍くなっている」と指摘。その上で、保釈中に薬物依存の更生施設に入所したことなどを考慮した。 判決によると、昨年8月~今年2月、長野県や沖縄県などで計3回、覚醒剤を使用した。 (産経ニュース2017.9.12.15:26より) |
2017年
2月
24日
金
名義貸しクレジット契約にも顧客免責の余地があるとの最高裁判断
最高裁平成29年2月21日
資金繰りに窮した販売業者に頼まれ、クレジット契約で商品を買ったことにした顧客が、代金を立て替えた信販会社への支払いを拒めるかが争われた訴訟です。
北海道旭川市の呉服店が2008~11年、「ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり、高齢者等との売買契約や商品の引渡しは存在する」と告げたうえで、「支払については責任をもってうちが払うから、絶対に迷惑は掛けない」と顧客に名義貸しを依頼。承諾した34人がつむぎや帯などを買ったことにし、信販会社2社が立て替えた代金を呉服店が運転資金に充てていました。店が分割払いしていたが、途中で破産したため、信販会社2社が34人に残金を請求しました。
割賦販売法は、販売店の説明にうそがあり、顧客側に大きな落ち度がなければ、契約を取り消せると規定しています。裁判では、店との約束が、法律上、契約を取り消せる「業者からのうその告知」にあたるかどうかが争われました。販売業者から「支払いで絶対に迷惑は掛けない」と事実と異なる説明を受けたとはいえ、不適切な名義貸しを承諾した顧客も保護に値するのかという問題です。信販会社は、無効等の事由をもって対抗することは、信義則に反し許されないと主張していました。
一審旭川地裁判決は2社の請求を棄却しましたが、札幌高裁は客の責任を認め、請求通り計約3700万円の支払いを命じていました。
最高裁第3小法廷は21日、「顧客が名義貸しに承諾していても、業者側が重要部分についてうその説明をしていた場合は、支払いが免除される」との初判断を示しました。
最高裁は「名義貸しは不正だが、顧客が背負うリスクの有無などについて業者がうそを告げ、顧客が誤解した場合は保護に値し、契約を取り消せる」と指摘。その理由として、「このような経過で立替払契約が締結されたときは、購入者は販売業者に利用されたとも評価しうる」と述べています。
その上で、顧客敗訴の二審札幌高裁判決を破棄し、審理を差し戻しました。顧客が店の説明をどの程度信用したかや、大きな落ち度がなかったかなどを改めて個別に判断することになります。
もっとも、山崎裁判官は「名義貸しの場合は,そもそも商品購入契約が架空のものであり,かつ,そのことを名義貸人が認識 しているという点で,同法が保護の対象として予定する場合とは著しく状況を異にするのであって,そうした場合をも同様に同法の保護の対象に含めるのは,相当とはいい難い。」と反対意見を示しています。
判決はクレジット契約を巡るトラブルで、消費者の救済可能な対象を広げた判断といえます。
2017年
2月
22日
水
非弁行為とは,弁護士でない者が報酬目的で行う法律事務の取扱い行為又は訴訟事件や債務整理事件等の周旋行為をいいます。弁護士法 72 条がこれを禁止しています。
もともと、この非弁行為は,「事件屋」による法的紛争への介入を想定していましたが,近時では,インターネットの発展等により情報発信・広告が容易になり,弁護士でない者が開設した法律問題相談サイトなどに誘引されて,弁護士でない者に事件を依頼したり,弁護士の紹介を受けたりする事例が生じています。典型例としては、弁護士でない者(NPO法人など)が,ウェブサイトで,「〇〇法律相談所」などと標示して法律相談を受けるようなものがあります。
ネットの削除要請代行、非弁行為と認める判決 インターネット上の書き込みの削除要請を報酬を得て代行する業者の行為は、弁護士法違反(非弁行為)にあたるとして、依頼者の男性が業者に支払った約49万円の返還を求めた訴訟で、東京地裁(原克也裁判長)は20日、非弁行為と認め、業者に全額の返還を命じる判決を言い渡した。 (略) 判決によると、原告の男性は2012~13年、東京都内の業者に自身を中傷する13件の書き込みの削除を依頼。業者の要請で10件が削除され、男性は計約49万円を支払った。 (略) 判決は「フォームの入力は男性の人格権に基づく削除請求権の行使で、サイト運営者に削除義務という法律上の効果を発生させる」と判断し、業者が男性から得た報酬を不当利得と認定した。(略) 2017年02月20日 23時53分 Copyright © The Yomiuri Shimbunより一部抜粋 |
他にも、不動産会社が新規事業として有償の賃料増減額交渉業務をインターネットで広告して行ったような場合は,非弁護士取締りの対象になることがあります。新規事業の立ち上げには、このような注意も必要となります。
2015年
9月
06日
日
プライバシー権とは、「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」として理解されています。」とされています。当該事実がプライバシーに当たるかの判断においては、公開された内容が(1)私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあることがらであること、(2)一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められることがらであること、換言すれば一般人の感覚を基準として公開されることによって心理的な負担、不安を覚えるであろうと認められることがらであること、(3)一般の人々に未だ知られていないことがらであること」という判断基準が用いられます。
本件では、朝食や着替えの手伝いなど、身の回りの介護を受けている様子を「他人に知られたくない私生活」と認定しています。
2015年
4月
14日
火
強度不足で賠償命令
事案
仙台市の8階建てマンションのコンクリート強度が不足し、補修では済まないほど耐震性を欠いているとして、所有者が建設会社側に、建て替え費用など約5億4千万円の損害賠償を求めた訴訟
原告側は、マンション引き渡し後、コンクリートの強度が設計基準の約半分しかないことが分かったと主張。高松建設などは「欠陥はない」と反論していた。
結果
仙台地裁は30日、元請けの「T建設」(大阪市)など3社に約5億1900万円の支払いを命じた。山田真紀裁判長は、コンクリート強度について「基準を少なからず下回る。建物全体の強度を大きく低下させ、基本的な安全性を損なう欠陥」と指摘した。
判決後、原告側代理人は「建て替えが認められたことは重要だ」と語った。高松建設の広報担当者は取材に「控訴も含めて対応を検討する」と話した。
2015.3.30 22:45産経ニュース参照
参考 最高裁平成14年9月24日判決
建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求することができるというべきである。
参考 最高裁平成22年6月17日判決
売買の目的物である新築建物に重大な瑕疵があり、これを建て替えざるを得ない場合において、当該瑕疵が構造耐力上の安全性にかかわるものであるため建物が倒壊する具体的なおそれがあるなど、社会通念上、建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価すべきものであるときには、上記建物の買主がこれに居住していたという利益については、当該買主からの工事施工者等に対する建て替え費用相当額の損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として、損害額から控除することはできないと解するのが相当である。
2015年
4月
14日
火
「よく滑るとネットで有名」…「餃子の王将」床転倒の重傷客と和解
損賠訴訟、100万円支払い
事案
「餃子の王将」の店舗内で40代の女性客が床の油で滑り、膝を強打して重傷を負ったとして、運営する王将フードサービス(京都市)に約2500万円の損害賠償を求めた訴訟
訴状によると、女性は平成24年11月、家族5人で餃子の王将寝屋川店(大阪府寝屋川市)に行った。従業員の案内で席に向かって数歩歩いたところ、右足が前方に勢いよく滑り、左膝を強打した。病院に救急搬送されたが左膝を複雑骨折する重傷で、最終的に左膝が動かしにくくなる障害が残ったという。
女性側は訴訟で、王将の店の床がインターネット掲示板やグルメ情報サイトなどで「よく滑る」と指摘され、「滑りやすいことは有名だった」と対策の不備を主張していた。女性側は「床に油分が存在していたことは間違いない」とし、王将側がマットを敷くなど予防措置を講じる義務があったと訴えていた。
これに対し、王将側は同店では防滑性の床材を使用し、従業員が毎日床を清掃しているほか、月に1回は専門業者が床を洗浄していたと強調。転倒したのは調理場の油が飛散するような場所でもなく、「過失はない」と反論していた。
結論
王将側が原告の女性に解決金100万円を支払う内容で、大阪地裁(小池明善裁判官)で和解して(3月6日付)。
2015.4.8 08:00産経ニュース参照
参照
コンビニエンスストアの店内で、客が水拭きで濡れた床に滑って転倒した事故について、コンビニチェーンのフランチャイザーの不法行為責任を認めた事例(大阪高等裁判所平成13年7月31日判決)
「不特定多数の者を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の者の通常有り得べき服装、履物、行動等、例えば靴底が減っていたり、急いで足早に買い物をするなどは当然の前提として、その安全を図る義務があるというべきである」
2015年
4月
14日
火
ボールよけ転倒死、男性の遺族が逆転敗訴 親の子供への責任「被害の予見可能性で線引き」 最高裁初判断(9日)
事案
小学校の校庭から蹴り出されたサッカーボールをよけようとして転倒した後に死亡した男性の遺族が、ボールを蹴った当時小学生の元少年(23)の両親に損害賠償を求めた訴訟。
愛媛県今治市で平成16年2月、バイクを運転していた当時80代の男性が、校庭から転がり出たサッカーボールを避けようとして転倒、足を骨折。直後に痴呆の症状が出て、事故から約1年半後に男性は肺炎で死亡した。男性の遺族が約5千万円の賠償を求め提訴。
弁論で両親側は「一般的な家庭と同程度に危険な遊びをしないよう指導するなど監督義務を果たしていた。2審判決は誤りだ」と主張。男性側は「両親には周囲に危険を及ばさないように遊ぶよう少年を指導する義務があった」と反論していた。
争点
子供の行為と死亡の因果関係に争いはなく、元少年の両親が監督義務を尽くしていたかが争点。民法では、子供の行為で被害が生じた場合、親らが監督義務を尽くしていなければ子供に代わり賠償責任を負うと規定している。ただ、過去の訴訟では因果関係が認められた場合、「被害者救済」の観点から無条件に親に賠償を命じてきた。
結論
最高裁第1小法廷は、「子供の行為が及ぼした被害に対する予見可能性の有無で、親らが監督義務を尽くしたかどうかを線引きできる」との判断を示した。
同小法廷は、今回の子供の行為について「ゴールに向かってボールを蹴る通常の行為で、道路に向けて蹴ったなどの事情はうかがわれない」と指摘。両親が普通のしつけをしていたことなども考慮し、今回の事故を「予測できたとはいえない」として、監督義務を尽くしており、賠償責任は負わないと判断した。
2015.4.9 15:48産経ニュース参照
2015年
4月
14日
火
1 事案
インターネット検索大手のグーグルが提供する地図サービス「グーグルマップ」に事実無根の「口コミ」が掲載され、名誉を傷つけられたとして、関東地方の医療機関が米グーグルに削除を求めた事案。
医療機関側の代理人弁護士によると「名前を検索すると、嘘の内容で医療機関を中傷する口コミが表示される」と訴えていた。グーグル側は「不適切なものは自主的に削除している。安易に書き込みを削除すればサービスが成立しない」などと主張した
グーグルマップでは企業や店舗、公共施設などの名前を入力すると、地図上に場所が表示されるほか、利用者らが評価などを書き込んだ口コミも見ることができる。
2 結果
千葉地裁松戸支部が訴えを認める仮処分決定を出した。決定は2件の口コミを削除するよう命じた。グーグル側は異議申し立てをする方針。
2015.4.13 産経ニュース参照
2015年
1月
17日
土
地裁ミスで保釈3日遅れ…国、7万円支払いで和解 大阪
朝日新聞2015年1月6日(火)00:56
事案
大阪地裁のミスで保釈が3日遅れた40代の男性(覚醒剤取締法違反罪で有罪確定)が国に損害賠償を求めて地裁に提訴した事案。男性は昨年5月に逮捕され、起訴後の6月12日に地裁が保釈を決めた。男性側は翌13日に保釈保証金を納めたものの、地裁内の連絡ミスで検事に納付完了が伝えられず、弁護人が気づいた同16日まで保釈されなかったと訴えていた。
結果
先月25日付で和解した。男性の代理人弁護士によると、国が7万円を支払うという。小佐田潔・地裁所長は「再発防止に努めたい」との談話を出した。
2014年
11月
21日
金
適格消費者団体とは、消費者全体の利益擁護のために差止請求権を適切に行使することができる適格性を備えた消費者団体として、内閣総理大臣の認定を受けたものです適格消費者団体は、強引な勧誘、不当な契約、誤った内容の表示など、「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」を守らない事業者の不当な行為について、差止め請求ができます。
2014年
10月
11日
土
<グーグル>検索結果の一部削除を命令 東京地裁仮処分
◇日本人男性の237件削除要請に、地裁は122件認める
1 事案
大手検索サイト「グーグル」の検索で自分の名前を検索すると、犯罪に関わっているかのような表現をした検索結果が出てくるのはプライバシー侵害に当たるとして、日本人男性が米グーグル本社に削除を求めて仮処分を申請した。男性の代理人弁護士によると、男性は237件の検索結果の削除を求めた。
2 結果
東京地裁が9日付で検索結果の一部を削除するよう命じる決定を出したことが分かった。
地裁はうち122件について削除を認めた。検索結果のタイトルやURL、抜粋部分の削除を命じた。地裁はグーグルについて「サイト管理者である以上、削除義務があるのは当然」などと判断し、プライバシー侵害を認めた。グーグル側は対象部分の122件について削除する意向を男性側に示したという。
3 参照
グーグルの同種の訴訟では、単語を入力すると関連語句を予測表示する「サジェスト機能」が名誉毀損(きそん)に当たるとして、東京地裁がグーグルに表示の差し止めや慰謝料の支払いを命じ、その後に2審で退けられた例がある。
【山本将克】毎日新聞2014年10月10日(金)09:47
2014年
9月
27日
土
「理解できる説明ではない」中国残留孤児への投資勧誘は違法 りそな銀に約120万円支払い命令、京都地裁
1 事案
日本語での意思疎通が難しいなか、不十分な説明で投資信託を買わされ損害を受けたとして、中国の残留孤児だった京都府内の70代の男性が、りそな銀行(大阪市中央区)を相手取り約250万円の損害賠償を求めた訴訟
男性は幼少期に中国に渡り、40代で日本に帰国。日本語は日常会話程度で読み書きはほとんどできず、投資経験もなかった。平成18年、京都市内の同行支店で行員から投資信託の勧誘を受け、定期預金を解約して約230万円を投資。23年に満期を迎えたが、元本割れし122万円しか償還されなかった。
2 結果
判決が25日、京都地裁であった。下沢良太裁判官は「通訳をつけるなど、男性が理解できる説明をしたとは認められない」と指摘。勧誘での説明義務について違法性を認め、同行に約120万円の支払いを命じた。判決によると、同行側は「リスクを説明し、男性は理解したうえで購入した」と主張したが、判決は「日本語能力や経済知識をみると、原告が商品の特性を理解する能力があったとはいえない」と指摘。「顧客の意向や能力に合わない勧誘だ」と判断した。
2014.9.26 10:10 産経ニュース[westセレクト]
2014年
9月
25日
木
性的虐待でうつ病、親族男性に3千万円賠償命令
1.事案
幼少期の性的虐待で心的外傷後ストレス障害(PTSD)とうつ病などを負ったとして、北海道釧路市出身の女性が親族男性に約4180万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審。
女性は3歳だった1978年から8歳だった83年にかけて男性から性的虐待を受け、2011年4月にPTSDと診断された。発症時期は83年頃とされ、06年にはうつ病も発症した。
2.1審判決
「うつ病はPTSDに付随したもの」として、PTSDを発症した83年頃が除斥期間の起算点とした。
3.札幌高裁
判決が25日、札幌高裁であり、岡本岳裁判長は除斥期間を適用して全請求を棄却した1審・釧路地裁の判決を一部変更し、男性に約3040万円の支払いを命じた。岡本裁判長はPTSDは除斥期間の適用を踏襲。成人後に発症したうつ病については「別個の損害」と解釈し、「うつ病による請求権は除斥期間が経過しておらず、男性には賠償義務がある」と結論づけた。
読売新聞2014年9月25日(木)21:11より
2014年
9月
22日
月
京都地裁、サイトの情報開示命令 「ランキングに証拠なし」
1 事案
リフォーム業者をランク付けしたサイトで最下位とされ名誉を傷つけられたとして、業者がサイト側の情報開示を求めた訴訟。
サイトには、リフォーム業者のランキングが掲載され、原告の業者は全28社中の最下位の点数だった。
2 結果
京都地裁は4日、名誉毀損を認め、サイトのあるサーバー運営会社に、サイト管理者のIPアドレスなどの情報を開示するよう命じた。
蛯名日奈子裁判官は判決理由で「ランキングが真実であることを裏付ける証拠がなく、権利侵害は明白だ」と判断。業者がサイト側に損害賠償を請求できるよう、サーバー運営会社が情報開示する必要性を認めた。
2014年9月4日 20時38分(共同)
2014年
9月
21日
日
「食べログ、削除して」飲食店側の請求棄却 「恣意的に情報制限、容認できない」札幌地裁
1 事案
飲食店の利用者が感想を投稿するグルメサイトに事実と違う内容を投稿されたとして、札幌市の飲食店経営会社が「食べログ」運営会社のカカクコム(東京)に店舗情報の削除などを求めた訴訟
判決によると、食べログには「料理が出るまで長時間待たされた」などの投稿が寄せられた。会社側は平成24年12月ごろ以降、投稿や店情報の削除を要請したが、カカクコム側は応じなかった。
2 結果
札幌地裁は4日、請求を棄却した。
判決理由で長谷川恭弘裁判長は「原告の会社は法人で、広く一般人を対象に飲食店を営業しているのだから、自己の情報を『個人』と同じようにコントロールする権利はない」と指摘。さらに「原告の請求を認めれば、情報が掲載される媒体を選択し、望まない場合は掲載を拒絶する自由を与えることになる。他人の表現行為や得られる情報が恣意(しい)的に制限されることにもなり、容認できない」との判断を示した。
2014.9.5 00:35 産経ニュースより
2014年
9月
21日
日
NHK受信料5年で時効 最高裁が初判断
1 事案
NHKが受信料の滞納分を何年さかのぼって請求できるかが争われた訴訟の上告審判決。
同種の訴訟では受信料を家賃などと同じ定期的な金銭債権(時効5年)か、一般的な債権(10年)のどちらと考えるかが争点になり、NHKによると、高裁などでこれまで確定した判決109件中、101件が「5年」と判断していた。
2 結果
最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は5日、受信料について「請求権が消滅する時効は5年」とする初判断を示し「消滅時効は10年」とするNHKの上告を棄却した。判決は、受信料は1年以内の一定期間ごとに金銭を支払う定期給付債権に該当し、民法に基づき消滅時効は5年と判断した。
2014.9.5 16:27 産経ニュースより
2014年
9月
21日
日
性別変更で入会拒否は違法 ゴルフクラブに賠償命じる
1 事案
性同一性障害のため戸籍の性別を男性から女性に変えたのを理由に入会を拒否されたのは不当として、静岡県の会社経営者の女性(59)が同県湖西市のゴルフクラブと関連会社に慰謝料など585万円の損害賠償を求めた訴訟。
クラブ側は、憲法21条の結社の自由を根拠に「構成員選択の自由がある」と主張した
2 結果
静岡地裁浜松支部は8日、入会拒否は違法と認め、クラブなどに110万円の支払いを命じた。
古谷健二郎裁判長は判決理由で「構成員選択の自由を十分に考慮しても、社会的に許容しうる限界を超え違法」と退け「原告の被った精神的損害は看過できず重大」と指摘した。
2014.9.8 21:38 産経ニュースより
2014年
9月
20日
土
高校ミスで推薦受けられず 埼玉県に慰謝料命じる
1 事案
埼玉県立I学園総合高校(同県伊奈町)を昨年3月卒業した元女子生徒が、高校側のミスで、志望大学への指定校推薦の応募機会を奪われたとして、県に慰謝料などの支払いを求めた訴訟
元女子生徒の第1志望の大学は指定校推薦入試で、同校に対し、異なる学科に1人ずつの計2人の推薦枠を設定。だが高校は同一学科に、女子生徒のほか1人の計2人を推薦した。
結果的に、同大には別の生徒が選ばれた。ミスが発覚した時点では、第2志望だった大学への指定校推薦の応募期間が過ぎており、元女子生徒は別の大学へ進学した。
2 結果
さいたま地裁は19日、県に約143万円の支払いを命じた。野村高弘裁判長は判決理由で「元女子生徒の精神的苦痛は決して少なくはなかった」と指摘した。
県は控訴しない方針で関係者の処分を検討する。
2014.9.19 21:34 産経ニュースより
2014年
4月
15日
火
「退学時に学費返さず」は無効=予備校の契約条項差し止め―大分地裁
時事通信2014年4月14日(月)20:35
北九州予備校が中途退学者に納付済みの学費を返還しないのは消費者契約法違反だとして、適格消費者団体「大分県消費者問題ネットワーク」(大分市)が同校を運営する学校法人「金沢学園」(北九州市)を訴えた訴訟の判決で、大分地裁の宮武康裁判長は14日、不返還を盛り込んだ契約条項の使用差し止めを命じた。
宮武裁判長は「(中途退学で予備校側が)いくらかの損害を被ることはあっても、中途入学者を受け入れるなどの対策を講じることは十分に可能だ」と指摘。消費者契約法の規定により、一括納入した授業料を一切返さないとした契約条項は無効だと判断した。
金沢学園は「主張が認められなかったことは大変残念。中途退学者への学費の返金に関し、判例が示されたのは初めてで、全国の認可校全てに影響を及ぼす可能性がある」とのコメントを出し、控訴する方針を示した。
2014年
1月
17日
金
●お墓(無縁墳墓)の明渡~墓地の改装~
行政上の問題と民事上の問題
墓地の「改装」には市町村長(特別区の区長を含む)の許可が必要になります(墓埋法5条1項)。墓地使用者以外の者が墓地の改装を申請する場合、施行規則第2条による場合と、同第3条(無縁墳墓)による場合が考えられます。
これらは、改装に関する行政上手続上の問題であって、墓地使用者との民事上の問題は別途、検討を要します。すなわち、行政上手続上の問題をクリアして改装ができたとしても、墓地使用者から損害賠償責任を追及される可能性は残ることには注意を要します。
下記のニュースは非常に参考になるので、ほとんどそのまま引用させて頂きました。
2013年
12月
28日
土
震災復旧工事で談合、千葉の建設業者20社に課徴金処分方針 公取委
2013.12.18 16:28 [不祥事] 産経ニュース
千葉県が発注した東日本大震災の復旧工事や道路補修工事で談合を繰り返したとして、公正取引委員会が独禁法違反(不当な取引制限)で、古谷建設(同県横芝光町)など約20社に数億円の課徴金納付を命じる方針を固めたことが18日、分かった。公取委が処分案を事前通知した。
ほかに通知したのは鈴木土建(大網白里市)、行木工務店(山武市)、庄司工業(東金市)など。通知を受けた業者を含めた計約30社に再発を防止する措置も命じる方針で、今後、言い分を聞いた上で処分を確定する。
千葉県は談合防止のため業者が一堂に会することのないパソコンによる電子入札を採用している。だが、各社は業界団体の会合などの際に集まり、入札参加の意向や受注調整について話し合っていたとみられる。
震災で、千葉県山武市では道路陥没や護岸が壊れるなどの被害があった。
● 不当な取引制限について
不当な取引制限は,独占禁止法第3条で禁止されている行為です。不当な取引制限に該当する行為には,「カルテル」と「入札談合」があります。「カルテル」は,事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い,本来,各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為です。「入札談合」は,国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札に際し,事前に,受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為です。
●課徴金とは?
課徴金とは,カルテル・入札談合等の違反行為防止という行政目的を達成するため,行政庁が違反事業者等に対して課す金銭的不利益のことをいいます。
公正取引委員会は,事業者又は事業者団体が課徴金の対象となる独占禁止法違反行為を行っていた場合,当該違反事業者等に対して,課徴金を国庫に納付することを命じます。これを「課徴金納付命令」と呼んでいます
●課徴金算定方法
(カルテルの実行期間中の売上額)×(業種区分による一定率)=課徴金
本件のような製造業では10%となるでしょう(中小企業の場合は4%)。
●課徴金減免制度とは、
入札談合やカルテル(不当な取引制限)により独占禁止法に違反した事業者が、自らその違反事実を公正取引委員会に報告し、資料を提出したときに、次のとおり課徴金を免除ないし減額する制度(独禁法第7条の2、10項~)。
(1) 調査開始日前の1番目の申告事業者→全額免除
(2) 調査開始日前の2番目の申告事業者→50%減額
(3) 調査開始日前の3番目の申告事業者→30%減額
(4) 調査開始日以後の申告事業者→30%減額
(但し、計5社まで、調査開始日以後は、最大3社)
2013年
12月
28日
土
徳田毅議員の姉、保釈決定 保証金3千万
2013.12.25 17:19 産経ニュース
徳洲会グループの公選法違反事件で、東京地裁は25日、徳田毅衆院議員(鹿児島2区)の姉で2件の公選法違反(運動員買収、買収資金交付)の罪で起訴されたスターン美千代被告(46)の保釈を認める決定をした。スターン被告は同日、保証金計3千万円を納付した。
弁護側によると、スターン被告は11月に逮捕された当初は事件への関与を否定したが、今月13日の勾留理由開示の法廷で一転して全面的に認めた。年明けに始まる公判でも起訴内容を争わない方針で、連座制が適用されて徳田議員が失職する公算が大きい。
起訴状によると、スターン被告は父、徳田虎雄前理事長(75)らと共謀。昨年12月の衆院選で、毅氏の選挙応援に派遣されたグループ職員594人に現金や航空券など計約1億5560万円相当を供与したほか、買収資金6千万円を提供したとされる。
●保釈金とは
保釈金とは、起訴後、留置場から被告人を出してもらう代わりに、逃亡防止のため裁判所に預け入れるお金です。保釈後、裁判所に定められた住居に住み、判決を受けるまで裁判に出席した場合、保釈金は「全額」返却されます。保釈後に逃亡し、裁判に出席しなかった場合は、保釈金の全額を没収されてしまいます。
●保釈金の相場
保釈金は、裁判官が個別事案に応じて、被告人の逃亡を防止するに足りる適切な保釈金額を設定することで決まります。
ですから、保釈金の相場を一概に言うことは難しいのですが、一般的な保釈金の相場は200万円前後でしょう。私は、「最低150万円は覚悟しておくように。」と伝えるようにしております。もちろん、軽微な事件又は審理が終結間近な事件の場合は、100万円前後の保釈金で足りる場合もあります。他方で、複雑で高額被害の経済犯罪の場合、被告人の所有資産が大きい場合には1000万円以上の保釈金を要する場合もあります。
2013年
11月
08日
金
建築瑕疵の判断基準
建物に欠陥があるとき、それが法的に見て「瑕疵」と言えるかどうかの判断は簡単ではありません。一生に一度の大きな買い物をした方によってみれば、完璧なものを求める気持ちは十分理解できます。他方で、建物を造るほうにしてみれば、人間が造る以上、完璧なものはありえません。
では、瑕疵といえるかどうかはどう判断するのでしょうか。「瑕疵」の判断基準は,一般に①通常有すべき品質・性能を欠いていること(客観的瑕疵),もしくは②当事者が契約で定めた内容に適合していないこと(主観的瑕疵),とされております。
客観的瑕疵とは,建築基準法等の法令による要求を満たしているかどうかや,標準的な技術水準に合致しているかどうかを基準に判断します。他方,主観的瑕疵は,当事者が契約で定めた内容の適合性が問題となりますので,設計図書,契約図書等のとおりの建築物となっているかどうかにより判断します。
建築紛争においては、しばしば「実際の強度に問題はない。」という反論がなされますが、こういった主張は妥当なのでしょうか。札幌地裁平成17年10月28日判決はこういった考えを否定しています。
1 争点(1)(本件建物の瑕疵の存否)について (1)瑕疵の判断基準 建物について瑕疵があるか否かを判断するに当たっては,まず,当該建物の設計図書,契約図書及び確認図書(以下「設計図書等」という。)が当事者間の契約内容を画するものであることに加え,それらが行政の行う建築確認や許可等の判断資料となることからすると,特段の事情のない限り,当該建物が設計図書等のとおりに建築されている場合には瑕疵がないとし,そのとおりに建築されていない場合には瑕疵があるものと判断すべきである。 また,法及び施行令,建設省(国土交通省)告示,JASS5(鉄筋コンクリート造建物の場合)等(以下これらを併せて「法令等」という。)は,建築上の最低基準を定め(法1条),それを具体化し,あるいは我が国の建築界の通説的基準を示すものである(JASS5も,時代とともに改正が重ねられてきた建築業界での通説的基準であると認められる(甲40)。)から,法令等の定めを満たしている場合には瑕疵がなく,これを満たさない場合には瑕疵があると判断すべきである。 これに対し,法令等が安全な建物が建築されることを目的として定められていることなどを根拠として,当該建物が事実上安全であれば瑕疵はないとすべきであるとして,事実上の安全性を瑕疵の判断基準とする考え方もある。しかし,建物の事実上の耐力を数値化することはできず,それを前提として将来当該建物に襲来する荷重を予測することもできないのであって,事実上の安全性の有無を的確かつ客観的に判定することは不可能である。したがって,事実上の安全性といった概念は,瑕疵の判断基準として合理的なものとはいえず,上記のような考え方を採用することはできない。 以上のことから,建物の瑕疵の存否は,上記のように,それが設計図書等に従っているか否か,また,法令等の定めを満たしているか否かによって判断するのが相当であり,以下においては,このような観点に基づいて,本件建物について瑕疵があるか否かを検討することとする。 |
建築紛争(建築瑕疵)に関するご相談で弁護士をお探しなら、東京都墨田区錦糸町・押上 アライアンス法律事務所までお気軽にご相談ください。
2013年
11月
08日
金
結露と瑕疵担保責任
1 どの程度の結露であれば瑕疵と認められるか
どんなに優れた建築技術を用いても、人が生活する以上、ある程度の結露は発生してしまいます。では、どの程度の結露であれば法律上の「瑕疵」といえるのでしょうか。この点について、盛岡地裁平成18年3月3日決定は、以下のように述べております。
本件建物の所在する盛岡市は寒冷地であり,主として冬季においてはマンション等の共同住宅として利用される建物の居室に多かれ少なかれ結露が生じることは公知の事実であり,また,結露は,建物の設計・施工に問題がなくても居住者の生活態様が原因となって発生するものである(乙23)ことからすれば,マンションの居室において結露が生じたとしても,そのことが直ちに当該マンションの瑕疵となるものではなく,日常生活上に何らかの不便,不都合等を生ずる程度の結露が生じた場合に,入居者との関係で当該マンションが通常有する性能を欠くものとして瑕疵があるものと評価しうると解するのが相当である。 しかるところ,上記認定のとおり,本件建物の入居者からは上記のような日常生活上の不便,不都合等に関する苦情が申し立てられていたにもかかわらず,結露に関する苦情は申し立てられておらず,このことからすれば,そもそも本件建物に瑕疵と評価しうるような結露が発生したとは認められないというべきである(なお,本件記録を検討して見ても,結露の程度に関する具体的な疎明はない。)。 |
2 結露の原因
では結露が出ていることを立証できれば瑕疵担保責任が認められるかといえばそうではありません。結露は、住民の生活態様による影響も大きく、しばしその旨の反論がなされます。
ですから、建築紛争において重要なのは、欠陥の出た場所(欠陥現象)を特定することではなく、その原因(欠陥原因)を特定することといえます。結露が出ていることをいくら主張しても、瑕疵と認められるわけではなく、その原因を特定しなければならないのです。この点について、盛岡地裁平成18年3月3日決定は、以下のように述べております。
(3)上記(2)で判断したところを別にしても,本件建物に断熱材の施工不良があり,これにより本件建物に瑕疵と評価しうる結露が生じたことを認めることはできない。その理由は以下のとおりである。 ア 債権者がその主張の根拠とする主な証拠は,甲4(調査報告書),甲34(意見書)及び参考人Bの審尋の結果である。 イ しかしながら,甲4(調査報告書)は,〔1〕本件建物の断熱材の厚さに関する適用基準に誤りがあり(乙23),誤った基準と本件建物における断熱材の厚さの調査結果との対比から直ちに本件建物における結露(但し,甲17により,調査箇所は示されたが,どの程度の結露かは不明である。)が断熱材の施工不良によるものであるとの結論を出していること,〔2〕結露は居住者の生活態様を原因として発生することも多い(乙23)にもかかわらず,上記〔1〕の結論を出すに当たり,居住者の生活態様が全く考慮されていないこと,その他Cの意見書(以下「C意見書」という。)で指摘されている甲4の疑問点を考慮すると,仮に本件建物に瑕疵と評価しうる結露が発生していたとしても,甲4により,当該結露と本件建物における断熱材の施工状態との間の因果関係の存在を認めることはできない。 ウ 次に,参考人Bは,甲34(意見書)及び参考人審尋において,本件建物において断熱材不足により結露が生じている旨の意見を述べている。すなわち,同参考人は,建物の性能と居住者の住まい方が重畳的な要因となって結露が発生すると一般論を述べ,本件建物については断熱材不足と住まい方が重なって結露が発生した旨の意見を述べる一方,甲32(調査報告書)に基づき,多数の住戸(47戸中18戸)に結露が生じたことから,本件建物の結露は主に建物の性能の問題に基因していると見るのが自然であるとも述べている(甲34の10頁)。 しかしながら,参考人Bが判断資料とした甲32(調査報告書)によれば,本件建物の全戸数48戸のうち結露の痕跡等ありとされているのは9戸であり,同参考人が47戸中18戸に結露が生じていた旨の上記認識自体誤っているうえ,同参考人は,審尋において48戸中9戸であっても上記の意見が変わらない理由について合理的な説明をしていない(参考人審尋調書27~28頁)。また,同参考人は,審尋において,甲32(調査報告書)の調査結果について,平成17年6月17日に本件建物を調査した際に結露があった(「ボード裏が濡れている」などと記載されている)とされる5室(201号室,203号室,204号室,304号室,305号室)については,断熱材不足が結露の原因とはいえない(同審尋調書36~38頁,40~41頁)と述べており,これは,同参考人の上記意見とは矛盾するものである。 以上の点に参考人Cの意見書(乙23)及び審尋の結果を併せ考慮すれば,仮に本件建物に瑕疵と評価しうる結露が発生していたとしても,それが主に建物の性能の問題に基因しているとの参考人Bの意見は採用することができない。 そして,仮に本件建物に瑕疵と評価しうる結露が発生していたとしても,他にそのことと本件建物の断熱材の施工状態との間の因果関係の存在を認めるに足りる証拠はない。 |
では、結露を瑕疵と認めた裁判例、東京地方裁判所平成24年3月27日判決(平成21年(ワ)第12552号)を見てみましょう。結露という結果ではなく、雨漏りを起こした原因とその補修方法に着目しているのが分かります。
(1)雨漏り ア 証拠(甲13ないし18,20,22,24,34,36,原告本人,証人c)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 屋根について,鼻先に樋がなく,バルコニー側を除いて水切り金物も設置されていない上,バルコニーからの排水の開口部にも水切り金物が設置されていない。また,塗布防水に亀裂が生じている。防水仕舞が適切でなく補修する必要があり,塗布防水も再施工する必要がある。 外壁について,2階のコンクリート打継部分にシールが施されていない。そのため,コンクリートの乾燥収縮により亀裂が生じて,外壁パネルの目地部から入った雨水が浸入していると考えられるから,コンクリート打継部分及び外壁パネルの目地部について補修する必要がある。 面付きのサッシュについて,コンクリートの抱き納まりを施さず,防水モルタルを約60ミリの厚さで充填している。そのため,モルタルの乾燥収縮により生じた亀裂から浸水していると考えられるから,再施工して補修する必要がある。 建物内部について,各部屋にカビが発生している。その範囲や程度に照らして居住者の使用方法に起因する結露によるものとは考えられず,雨水が浸入した結果であると考えられるから,補修する必要がある。また,居間の床下に冷暖房用のドラム缶が設置されているところ,その点検口は防湿防臭仕様ではなく,埋設する必要がある。 イ 上記認定事実によれば,被告が完成させた本件工事には,上記のとおり雨水の浸入を許す設計施工を行った瑕疵があると認められる。 この点について,被告は,カビの原因は原告の使用方法によって生じた結露である旨を主張しているところ,被告代表者は,その尋問において,雨漏りは3か所にすぎない旨を述べるが,具体的に雨漏りの箇所を示さないばかりか,当該部分とその他の部分とを区別する具体的理由も明らかにしない。原告は,本件建物の引渡しを受けた後,継続的に雨漏りが生じている旨を訴えて被告に対応を求め続けているところ(前記争いのない事実等(4)),原告本人尋問の結果によっても,原告による居住の態様等が通常と異なるものであることはうかがわれず,他に本件建物内にカビが生じている原因が原告の使用方法による結露であることを示す証拠もないから,被告の主張は採用しない。 |
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2013年
11月
03日
日
事 案 |
本件は,Y中学校(以下「本件学校」という。)の野球部(以下「本件野球 部」という。)に所属していた原告が,本件学校を設置管理する被告に対し,原告が本件野球部の練習において右眼にボールの直撃を受け,右網膜萎縮等の傷害を負った事故(以下「本件事故」という。)に関し,本件事故は本件野球部の顧問教諭らが防球ネットの配置を徹底せず,生徒に防具等を装着させず,複数箇所の同時投球を避ける等の指導監督義務を怠ったことに起因するなどとして,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金3725万6926円及びこれに対する本件事故の日である平成21年9月2日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 |
争 点 |
本件顧問教諭らの注意義務違反の存否 |
裁判所の判断 |
(1)本件顧問教諭らの注意義務 本件野球部の活動は,教育課程外のいわゆる部活動であり,生徒の自主的,自発的な参加により行われるものであるとはいえ,教育課程との関連をもって学校教育の一環として行われる以上,本件顧問教諭らは,当該活動について生徒の安全を確保し,事故の発生を未然に防ぐべき一般的注意義務があるというべきである。 (2)本件顧問教諭らの注意義務違反の有無 ア そして,野球の練習の中でもフリーバッティング練習は,ボール係や守備に ついている生徒にバッターが放つ高速の打球が衝突して生命身体に対する危険の生じる可能性が高い練習であって(上記認定事実(1)キ),特にバッターの正面の近距離に位置するボール係は,極めて高い危険に晒されることになるから,野球部の指導者である顧問教諭らとしては,安全指導の手引きにおける記載(同(8))や本件ピッチングマシーンのパンフレットの記載(同(9)参照)等を参考にした上で,フリーバッティング練習において適切な位置に本件各ネットを設置しなければ,バッターの打球によってボール係の生命身体が害されるおそれがあることを容易に予見し得たといえる。 そうであれば,本件顧問教諭らには,フリーバッティング練習において,本件各ネットがボール係を打球から保護する位置に確実に設置されていることを同練習に参加して自ら又は他に野球の練習における安全指導の知識を有する教員に指示して確認するか,さもなければ同練習においては必ず本件各ネットが上記位置に設置され,ボール係が本件各ネットから出ることなく保護されている状態を維持するよう,本件野球部の部員らに対し,徹底した指導を行うべき注意義務があったといえる。 イ しかるに,本件顧問教諭らは,本件フリーバッティング練習に参加しておら ず(同(5)ア),本件フリーバッティング練習時に本件各ネットが部員らを打球から保護する位置に設置されていることを直接確認せず,他の教員に確認させることもなかった。 ウ 確かに,A教諭は,本件野球部の練習に参加した際などに,部員らに対し 野球の練習の危険性やフリーバッティング練習における安全性の確保の指導を行ったこと(同(2)ア,同イ)が認められ,その結果として,部員らがフリーバッティング練習において本件各ネットを設置する必要があることを知り,本件フリーバッティング練習以前において,本件各ネットが設置されずにフリーバッティング練習が行われた形跡がうかがえないこと(同(3)イ)からすれば,A教諭の上記指導は,一定程度の効果を上げていたといえる。 しかしながら,①本件顧問教諭らは,朝練習に稀にしか出席せず(同(1)イ),放課後の練習においても不定期に出席するのみであり,また,他の教員をして出席させることもしておらず(同(1)イ),部員らに対し,定期的かつ計画的にフリーバッティング練習における安全上の注意点について注意喚起を行っていた とは認められないこと(同(2)イ),②本件事故時において本件顧問教諭ら及びその他の教員に代わり部員らを指導監督するキャプテン等の責任者を指定するなどしておらず(同(2)エ),本件顧問教諭らの指導を間接的に部員らに浸透させる態勢を整えていたとも認められないこと,③側方ネット及び本件ピッチングマシーンは,グラウンドのほぼ中心に位置しており(上記前提事実(3)ウ),多くの部員らにとって,本件フリーバッティング練習において側方ネットが設置されていないこと及び原告が本件ピッチングマシーン後方でボールを拾っていたことは,容易に気付き得たと認められるにもかかわらず,本件フリーバッティング練習は,側方ネットが設置されず,かつ,原告がボールを拾っている状態で,漫然と本件合図が出て開始されたこと(同(2)エ,上記認定事実(5)エ),④本件顧問教諭らは,本件野球部の1年生らの判断能力が未熟で,かつ,野球の経験が少ないことから,特に安全指導を行う必要性のあると考えられるにもかかわらず,何ら特別の安全指導を行っていないこと(同(2)ウ),⑤原告は,本件各ネットの設置について,本件顧問教諭らや本件野球部の上級生からの特別の指導によって学んだのではなく,同上級生が本件各ネットを設置しているのを真似て,分からない点について質問をすることにより覚えたにすぎないこと(同(4)イ)などからすれば,部員らは,本件各ネットが有する安全上の重要性について十分に理解しないまま,慣例としてこれを設置していたにすぎなかったと評価するのが相当であり,本件顧問教諭らが,部員らに対し,フリーバッティング練習におけるボール係等の生命身体の侵害の危険性について,その高度な危険性を理解させるに十分な理解を得させる指導を行っ ていたとは到底認められない。 そうであれば,本件顧問教諭らの指導によって,フリーバッティング練習に おいて必ず本件各ネットを適切な位置に設置し,また,ボール係が本件各ネットで保護されるよう,同ネットから出ることのないよう,指導することが徹底されていたとはいえない。 エ よって,本件顧問教諭らには,本件野球部の活動について部員らの安全を確 保し,事故の発生を未然に防ぐべき義務に違反した過失が認められる。 |
争点2:過失相殺 |
ア 原告には,①以前に野球の練習中にボールを眼に当てて怪我をした経験を有しており(上記認定事実(4)ウ),野球はボールが高速で身体に衝突することがあって危険が高いスポーツであることを知っていたと認められること,②原告は,本件ピッチングマシーン及び前面ネットの設置が行われた後に本件合図を聞いており(同(5)エ),本件フリーバッティング練習がまさに開始されたことを知っていたにもかかわらず,本件ピッチングマシーン周辺のボールを拾うことを継続したこと(同(5)エ),③原告は,ボールを拾う際に,第1レーンのバッターの打球を注視していなかったこと,④原告は,従来のフリーバッティング練習において,側方ネットを設置しなければいけないことを知っており(同(3)イ),本件ピッチングマシーン周辺から側方ネットの設置の有無を確認することが容易であった(同(3)ウ)にもかかわらず,本件フリーバッ ティング練習においては側方ネットが設置されていなかったことに気付かなかったこと(同(5)ウ)等の事情が認められるのであって,原告の上記各行為が本件事故の発生に少なからず寄与しているのは明らかである。そうであれば,(ⅰ)原告が野球の経験が浅く(上記前提事実(1)ア),(ⅱ)野球部に入部して間もなかったこと(上記認定事実(4)ア),(ⅲ)本件フリーバッティング練習の際に初めてボール係を務めたこと(同(5)イ)といった事情を考慮しても,原告に生じた損害の全額を被告に負わせるのは不公平であるといえるから,本件顧問教諭らの上記過失の程度と比較し,本件損害のうち30%を過失相殺すべきである。 |
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2013年
11月
02日
土
事 案 |
陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都練馬区)に2等陸士として勤務していたOさん=当時(19)=が平成19年に自殺したのは、上官の暴行などが原因として、群馬県富岡市に住む両親が国に約9440万円の損害賠償を求めた訴訟。訴状によると、Oさんは19年4月に入隊。同年8月ごろから、教官らに複数回「辞めたい」と申し出たが「辞めた後がはっきりしない」と言われ勤務を続けた。さらに同年10~11月、教官とは別の上官1人から顔を殴られるなどの暴行を受けた、としている。Oさんは19年11月19日、駐屯地内で飛び降り自殺を図って倒れているのが見つかり、死亡が確認された。国は暴行の事実を認めたが、自殺との因果関係は否定していた。 |
結 果 |
国に220万円の支払いを命じた。 |
出 典 |
MSN産経ニュース2013.10.16 14:28 |
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2013年
10月
17日
木
事 案 |
俳優のSさん(39)、Mさん(39)夫妻の飼い犬が同じマンションの住人にかみつき、負傷した住人が転居したため賃料収入を失ったとして、東京都目黒区のマンション管理会社がSさん夫妻などに約5200万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決。Sさん夫妻が飼っていたドーベルマンが平成23年5月、同じマンションに住んでいたアートディレクター、Aさん(48)の妻の太ももにかみつき、11日間のけがを負わせた。妻が現場を通るたびに気分が悪くなるなどしたため、Aさんの家族は同年6月に転居した。 |
結 果(控訴審) |
Sさん夫妻が「マンション住人の身体の安全などに配慮する注意義務を負っていたが、これに違反する過失があった」と判断。「事故による住人の転居で、別の人に部屋を貸すまで賃料収入を得ることができなかった」として、賃料収入の賠償責任を認め、1725万円の支払いを命じた。 |
参 照(原 審) |
1審は、契約上、Aさん側が解約違約金として支払うはずだった賃料2カ月分(350万円)を、転居の経緯を踏まえた管理会社が請求しなかったことを「会社が肩代わりした損害」と認め、弁護士費用を含めて賠償を命じていた。 |
参 照2 |
事故をめぐっては、Sさん側がAさん側に慰謝料など約31万円を払う内容で示談が成立している。 |
出 典 |
2013.10.10 19:02 産経ニュース |
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2013年
9月
02日
月
事 案 |
コンビニエンスストア最大手「セブン-イレブン・ジャパン」(東京)の加盟店主4人が、販売期限の迫った弁当などを値引きする「見切り販売」を制限され損失が出たとして、同社に計約1億4千万円の損害賠償を求めた訴訟。原告4人は平成19~21年に見切り販売を始めたが、社員から「値下げはできないルールになっている」「店が続けられなくなる」などと妨害された。 |
結 果 |
「取引上の優位な立場を利用して販売を妨害し、加盟店に不利益を与えた」として計1140万円の支払いを命じた。 |
理 由 |
店舗指導の担当社員が「値下げは禁止。店が続けられなくなる」などと店側に伝えたことを認定。「事実上の強制があり、(加盟店側の)商品の価格決定権を妨げた」と判断を示した。 |
備 考 |
妨害を否定してきた会社側は「主張の一部が認められず遺憾。承服しかねるので上告する」としている。 同種訴訟では今年3月、福岡高裁で加盟店側が逆転敗訴した一方、福岡地裁では一部の賠償を認めるなど、妨害の有無について判断が分かれている。 |
出 典 |
2013.8.30 23:45 産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130830/trl13083023500003-n1.htm |
2013年
7月
17日
水
事 案 |
横浜商科大高校(横浜市)柔道部の練習中の事故で重度の障害が残った元部員の男性と家族が学校側に約2億7千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決。男性は平成20年4月に入学して柔道部に入部。それまで柔道の経験はなかった。同月16日の練習中に投げられ、脳振とうと診断された。さらに翌月3日、神奈川県大会の試合前の練習で、顧問が目を離している間に大将を務める同級生に投げられ、倒れて病院へ搬送された。 一審横浜地裁判決は過失を否定し、請求を棄却していた。 |
結 果 |
「脳振とう後の競技への復帰には適切な判断が必要、と当時から言われていた」と述べ、練習に加わることを見逃した過失があったと判断した。「練習方法を十分に指導していれば回避できた」と顧問の過失責任を認め、計約1億8700万円の支払いを命じた。 |
出 典 |
2013.7.3 21:23 産経ニュース |